鉄道大臣のひとりごと

老人ホームで過ごしながら徒然に考えたこと

有料老人ホーム(続5)

私の老人ホーム生活は十数年に及びます。 その間、幾つかの老人ホームをいわば遍歴してきました。 幾つかの他の老人ホームも見聞きして来ています。 そうした長期に渡る経験の中から、気付いたことの一つは老人ホームの食事の問題です。 食事は、老人の数少ない楽しみの一つです。 ところが、自家所有の本格的調理場と本物の料理人を抱える老人ホームは、まずありません。

 

その料理人も、経験に富んだ人を雇うのは、よほど難しいらしく、ある程度の経験を積んだ人を料理長(板場)とし、素人に毛が生えた程度の人を板横、その他には素人を雇って、調理をさせているのが実態のようです。 事実、ある老人ホームの料理人募集広告を見たことがありますが、それには「素人、時間給アルバイトOK」とありました。 聞くところによりますと、他の外食産業と料理人(募集)を競争したり、施設である程度の経験を積ませると、引き抜かれることもあるようです。

 

食事は、外部の給食事業会社から取り寄せ、ないし調理場を提供して調理を依頼するのが一般です。 ちなみに、が住んでいる老人ホームでは、朝飯代が¥540昼飯代が¥823、夕飯代が¥797に設定されています。 ここで重要な点は、価格が「設定」されていることです。 なお、他の老人ホームの場合も、原則として、食事代は、施設側によって設定され、入居者全員が同じ食事を食べています。

 

しかし、外出できない入居者といえども、家族や仲間、テレビ、雑誌、など、外側の世界への窓口を通して、外の世界の食堂、食事のことを見聞きします。

その結果、施設が設定した食事の値段はもとより、昔食べた料理、惣菜、など、それに、市中で販売されている料理の味、価格、見栄(ミバ=見掛)、を知る(感じる)ようになり、施設の食事と比較することになります。 その結果、施設が設定する食事価格の高額さ、不味さ、味気なさに、苦情を言い出すようになるのです。

 

ちなみに、この施設の食事に満足できない入居者(健常者)の中には、外食、ないし自炊する人もいます。 その場合には、食事毎に前日の午後5時までに、「食事止め」の事前通告を行って、食事代は払いません。 また、施設では、原則として火気と刃物(包丁、大型のハサミ、等)の使用は禁じられていますから、火気に類するものは、電子レンジ、IHヒーターの使用と包丁の使用を精神的健常者に限り、黙認しています。

 (施設の中には、健常者の居住を前提として、提供する部屋に初めから、IHヒーター、ミニ・キッチン、を備え付けたところもあります)

 

施設が提供する食事については、食べている人たちの意見、苦情、希望を聞く、食べない人たちの意見、希望も聞く、サイレントな人たちの希望も探る、が施設側の食事管理の基本となりますが、サイレントな人たちにも種類があります。 食べてはいるが、黙々と黙って食べている人たち(知的障害者に多い)と発表される献立に始めっから見向きもしない人たち、の2種ですが、この2種類の中でも,注目されるべきは発表される献立に始めっから見向きもしない人たちです。 このサイレント・オーデイエンスは、何らかの特別の理由を持っているのです。 問題は、その特別の理由にあります。

 

発表される献立に始めっから見向きもしない人たちは、 元々は食べる人たちであった人たちが自分たちの意見、苦情、希望が満足に果たされないために、その不満が成長(?)・悪化して(昂じて)、不服を感じたまま、そうなってしまったのかもしれません。 そうだとすれば、単なるサイレントな人たちではありません。 その人たちの声を(彼らは黙って、批判的な目で眺めています)、どのようにして探り出しますか? この辺に、施設側の悩みがあります。

 

老人ホームの食事問題の解決には、入居者の意見、苦情の調査に併せて、食事提供会社との交渉もあります。 私が住んでいる施設の場合は、食事提供会社として、系列の兄弟会社を指定しています。 施設の苦情調査結果は、兄弟会社である食事提供会社へ連絡され、双方協力の基、苦情対処に当たります。 しかし、これが難物で、容易に協力が果たされません。 私の長い施設遍歴を通して、いままで、苦情が的確に対処されたことはありません。