鉄道大臣のひとりごと

老人ホームで過ごしながら徒然に考えたこと

化粧(メイク)

随分、昔の話だが、ある有名美男映画俳優が焼餅を焼いたらしい暴漢に襲われ、大事な商売道具の売りだった顔を傷つけられた事件が在った。 彼は、その後、(験を担いで?)芸名を変えて出演するようになった。 その後も、これは別の事件だが、有名歌舞伎俳優が、暴走族グループらしいと判明した連中と酒の上の揉め事から、やはり商売道具の顔に陥没骨折を負うという大事件があった。 

 

どちらの場合も、その後、外面上は商売に大した支障もなく舞台に出ている。

しかし、傷を負った箇所は、顔である。 支障がなかろう筈がない。 この支障を巧みに隠し覆せているのは、化粧のお陰である。 化粧は、女専用のものではない。 男も化粧する。 近頃、街中に溢れる(?)イケメン連中も、大なり小なり(顔、頭髪、鼻毛、入れ墨を含めて)、どこかに化粧を施している。

 

化粧とは、「化け」、「(装う)=粧おう」と書く。 男も、眉、鼻筋、などに気を配る。 女は、なおさらである。 道理で化粧品会社が儲かる筈である。 そう言えば、色気の大事な要素、舞扇に併せて、嬉しい京みやげの一つは、京紅、など、化粧道具であった。 化けるための小道具には、他にも色々のものがある。 京扇、和傘(蛇の目)、手拭い、それに、何よりも仕草(立ち居振る舞い)と言葉使いが大切である。 化粧が、色気の最大要素の一つであることは言うまでもない。 

 

隠れた化粧に欠かせないのは、匂いである。 汗臭い男は、頂けない。 ほのかな女の匂い、香り、薫、ほど、男心をそそるものはない。 昔の女は、匂袋で、現代女性は香水で、さりげなく男を誘う。 「はなやいだ」とは、「花」、ばかりでなく、「鼻」をも意味しているのだろう。 そう言えば、静かな月夜にすら、匂いを感じる。 側に佇む女の「移り香」かも知れない。

 

今ひとつ、忘れてはならない化粧の要素は、「声」である。 作り声、歌声。 美しいウットリとする歌声はさておき、最近は、「オレオレ声」と言ういかがわしい声も生まれている。 この声の化粧で、相手(主として高齢者)を謀か(たばか)って、高額の金を奪い取ると言う悪辣な化粧もある。 他人を謀かる嘘の声は、「悪化粧」とでも、言うべきか? 化粧は、人を化けさせる。 化粧は化け者(化け物)を作るから、心すべきである。