鉄道大臣のひとりごと

老人ホームで過ごしながら徒然に考えたこと

大岡越前守

 

私が棲む老人ホームは,丁度、江戸時代の棟割長屋のような仕組みで作られた格子の無い牢獄だ。 異なる点は、鉄筋コンクリート3階建の作りになっていることと3食付きで、店賃(たなちん)が滅法高いことだ。 到底、八っあん、熊さんの住めるところじゃない。 江戸の棟割貧乏(?)長屋に在ったような日常のゴタゴタは、絶え間ない。 人口の内容は、昔も今も変わらない。 井戸端(現代風には、食事用ラウンジ、つまり食堂)の喧騒、喧嘩で、専ら老婆どもが騒ぐ(老爺の数は少ない)。

 

お定まりの苦情、愚痴は、食い物問題。 値段が高いのに、不味いじゃないか、うどんが延びてる、パンが硬い、牛肉の脂が抜けている、このおナスの煮物は消毒剤の臭がする。 やいのやいのと大家さんに訴えても、それは賄い方の問題と、知らぬ存ぜぬ、馬耳東風、カエルの面に小便と、あっち逃げたり、こっち誤魔化したり、ただただ所定の食事代だけはチャッカリ前払いで頂きます!

 

食い物の恨みは、恐ろしいぞ。 大家に訴えても、話しにならん、と言うのなら、地主、町年寄へ、恐れながらと、訴える。 それでも、鉄面皮に不味くて高い食い物を食わせようと言うのなら、江戸町奉行大岡越前守のお出ましを願うより仕様がない。 それで、なお駄目というのなら、大阪町奉行大塩平八郎の乱(反乱・暴動)を期待して、大塩さんの出陣を仰ぐことになる。

 

どこかの国の内閣のように、悪いことと知りながら、そこは国民(入居者)に泣いて貰え、とゴリ押しで、(儲ける為の)会社の施策を押し通す。 もともと、食事代は、契約上、特定の価格を高めの値段で、「設定」してしまっている。 だが、実際に提供する料理は、「仕入の都合」、「冷凍食材の大量購入で安く上げる」、などなど、自由勝手な価格で始末する(その辺にも、大家の地主、町年寄への顔向けの秘密がある)。

 

大家さん、「こんなに高い値段の不味い食事を出す店なら、街では誰も来ませんよ」と、注意を促しても、「そこは心配ない」、と図々しい我が者顔。 それもその筈、泣いているのは、「格子無き老後苦」に取り込まれた「籠の鳥」。 老人ホームの「旨ま味」が此処にもある。 道理で、我も、我もと、いろいろな事業体が、老人ホーム事業へ参入してくる筈。