鞍馬天狗

夢寐のたわごと

照れ隠し

老人ホームには、「見守り」と言う制度がある。 以前に何回も述べたように、老人ホームは「棟割長屋」、もしくは「ハーモニカ住宅」のように、小さな個室を幾つも並べ、または、集合させて、作られている。 その個室の集合体の一部屋一部屋を「覗き見」して、入居者の安泰を確認するのが見守りである。 従って、老人ホームでは、原則として、終日(夜中を含めて)、部屋に鍵は掛けない。 事実、私が住む老人ホームでは、数時間毎に(夜中を含めて)、部屋が、ヘルパーに依って、入れ替わり立ち代わり、覗き見される。

 

この見守り制度を入居者の視点から考えてみると、「プライバシイが無い」と言うことでもある。 プライバシイの尊重は、どこでも大切だとされている。 では、老人ホームは例外なのか? 有料(金を払って入居者の家族が)、入居者の介護を頼んでいるのであるから、施設側も、約束(責任)上、確実に入居者の安泰を守らなければならない。 その責任を遂行するための一つの介護方法が「見守り」らしい。

 

大半の入居者は、自意識の無い(失った)ボケ老人、認知症患者であり、プライバシイなどを問題にする人達ではないから、「見守り」を見逃すのだろうが、自立した健常老人(隠居)は、当然、覗き見されると、「見咎める」。 見守り行為を行っているヘルパーたちも、見守り行為に「後ろめたさ」を感じるらしい。 その証拠に、覗き見(行為)を健常入居者に気付かれると、「照れ隠し」に、その都度「見守りです」と断って行く。 

 

ところが、新米のヘルパーは、覗き見を、部屋の内部に居る入居者に見咎められ,叱声を掛けられると、適当と(勝手に自分が思う)無意味な,見え見えの言い訳を並び立て、ビクビクした仕草で、いかにも悪い事をした(事実そうだが)、という顔で、照れ隠しのにが笑いを浮かべて、部屋を立ち去って行く。

 

この事実は、2重の意味で、見守り行為が「罪な行為」であることを示している。 第一に、他人のプライバシイを侵す「盗み見行為」そのものが、健常者(通常の人)には、許すことはの出来ない行為である。 第二に、盗み見を強制されているヘルパーたちの「罪悪感(盗み見しているのを見咎められると彼等が言い訳をすることから分かるように)」を不必要に掻き立てている。 盗み見は、相手が、いわゆる「介護」、とくに身体的介護を必要とする痴呆老人であれば、許されるかもしれないが、通常は(一般的に言って)「恥ずべき行為」である。

 

こうした「罪な行為(悪徳行為)」が、制度として行われる「混住」の有料老人ホームは、本質的に「悪しき施設であり、悪しき制度である」。 健常者老人の立場からは、健・異別住の施設の、制度の、老人ホームを切に望みたい。