鉄道大臣のひとりごと

老人ホームで過ごしながら徒然に考えたこと

情(じょう)

じょう〔ジヤウ〕【情】

 物に感じて動く心の働き。感情。「憂国の情」「好悪の情」「知情意」 他人に対する思いやりの気持ち。なさけ。人情。「情の深い人」「情にもろい」

 まごころ。誠意。

 意地。

 男女間の愛情。また、情欲。「夫婦の情」「情を交わす」

 事情。いきさつ。「情を明かす」

 おもむき。味わい。趣味。

デジタル大辞泉の解説

 

この解説によれば、「情」は、男同士、もしくは、男女の関係、など二人以上の人間の関わり(かかわり)を前提として成立する。 言うならば、相手なしには、「情」はあり得ないと言うことである。 さらに加えれば、「憐憫の情」のごとく、一方が優位の立場に立ち、他方が劣位であっても、成立する。

 

健常(自立)老人、ボケ老人、認知症患者らが、混住する老人ホームの世界では、人間関係(正常社会)の成立、そのものが極めて困難である。 従って、入居者同士の一般的関係は、「無関係」か、あるいは、自立者同士でなければ、「憐憫の関係」なる。

 

二人以上の人間が同居すれば、とうぜん、融和の関係も成立すれば、摩擦も生じる。 混住する老人ホームに於ける少数の自立者の多数の非自立者に対する関係は、成立するとすれば、通常、融和なら「憐憫」、摩擦なら「侮蔑」である。 

 

この混住老人ホームを経営管理する側は、管理の便を考慮して、当然、多数の非自立者たちを基準にして、物事を運ぶ。 「憐憫」的支援は、通常「有料」の名のもとに行われる「介護サービス」に含まれる。 有料老人ホーム内の自立者に対する「有料介護」は、相対的に軽くなってしまう。 従って、卑近な言葉でいえば、「割りを食うのは」自立者である。 自立入居者が、非自立者に対して、自立者が見せ、示す「惻隠の情」や「義侠心」に基づく自立者たちによる「憐憫サービス」は、彼等の勝手であり、いわば「おまけ」である。

じょう【情 qíng】

中国思想の用語。 狭義には感情,情欲のことで,七情(喜,怒,哀,懼(おそれ),愛,悪(にくしみ),欲)として類型化されるが,広義には静かな〈性〉(本性)が動いた状態をすべて情と呼ぶ。 したがって四端(惻隠(あわれむ),羞悪(はじる),辞譲(ゆずる),是非)や思慮なども情の範疇(はんちゆう)に入る。 情がさらに激しく動いた状態が〈欲〉とされたようである。

世界大百科事典 第2版の解説

 

複数の人間が同居する老人ホームでは、これも当然のことながら、上記にある「七情」のすべてが現わされる。 喜びもあれば、怒りもある。 憐れみも感じれば、恐れもする。 親しみもあれば、憎しみもある。 年老いて、楽しむことが減ったにしても、怒りや不満の種は絶えない。

 

しかし、体力の衰えた老人の場合は、その全ての情が平均した形で表されるわけではない。 例えば、色情は既に枯れている。 現される最大のものは、「喜」、つまり喜びを求める、である。 ここでも、自立者は「割を食う」。 それと言うのも、経営管理側は、数に勝る非自立者に目線を据えて、物事を図るからである。 極言すれば、有料老人ホームは、自立者を「当て馬」として(十分な金を巻き上げながら)入居させ、数合わせ(何のため?)を図っている,と言えなくもない。 ともあれ、では、老人たち(主として、老婆)は、何事に喜びを求めるか?  老い先短い老人である。 大抵の場合、求める先は「食」、つまり、食い気である。

 

しかし、食物についても、有料老人ホーム側の配慮(誰に対する?)は大きい。

それでなくとも、嚥下困難の恐れが大きく成っている老人である。 家族から預かった大事なお客さまである入居者の食べ物は、「安全」が第一となる。

もしも、入居者の健康に障害が起こったら、その責任は施設側に求められる。 安全と安心の両方を(さらに、コストの安い経営の都合を)満たす食物は? 

 

そこで、犠牲になるのは、「旨い」である。 どうせ、ボケた、恍惚の老人たちである。 お金の出処、ご家族様、の依頼で預かる限り、入居老人たちの命だけは守らなければならない。 「旨い不味い」は、贅沢である。

 

野菜? 高い。 肉? これも、例え輸入肉にしようとも、牛肉は高い。 では、豚、鶏?  いや、魚? 豚肉のことは、ともかく、鶏や魚と言えども、近頃は「輸入」である。 残るコスト低減(経営者側都合)の可能性は、仕入、調理・加工の方法にある。 幸い、魚は、四面海に囲まれた日本列島では、魚は、自然、ないし国際的制約があるとは言え、比較的自由に買うことが出来る。

 

しかし、腐敗速度の早さから、魚には、輸送・保存上、冷凍を重ねねばならないと言う副次的問題が大きい。 それでも、経営側の要請(儲けるニーズ)は強い。 冷凍魚に一層の工夫を加えて、老人に食べ易く、老人に危険の少ない調理法で提供すれば、問題は軽くなる。 

 

近頃は、高齢者向け弁当、食事を売り文句に、(独身高齢男性?)を狙った食事提供会社の数が増えてきた。 それどころか、冷凍でネットを通じて、単品食品を売り始めているし、何日か分を纏めた、セット販売もある。  こうした外販の食材を、老人ホームで買う事自体が、当該老人ホームの「沽券に関わる」ことかもしれない。 おそらく、そのような理由もあるので、巨大な老人ホーム・チエーンでは、自社の系列内に給食小会社を設立し、その子会社に、系列老人ホームの食事を、潤沢な資金に物を言わせ、冷凍食材の大量一括購入、などの方法を使わせて、扱わせている場合もある。

 

例:某宅食会社の宣伝文

糖質制限

ダイエットや肥満、メタボリックシンドロームなどで食事療法をされている方向け

MFS糖質制限食A(1包装)の基準栄養価

飯が付いて40g以下。糖尿病、肥満、ダイエットに

塩分制限食

高血圧や心臓病など、塩分・脂質摂取制限が必要な方向け

 

高齢者が好む「お魚」の提供を例に取れば、多くの有料老人ホームでは、安全・安心を名目に、「骨の無い、または、骨を事前に取り去った魚料理」、そして、結果的に「焼かない,不味い蒸し魚料理」を提供している。 如何に体力が衰えたとは言え、小さな子供のように、母親に骨を取って貰い、ムシって貰った後の柔らかい身だけを食べる、程ではないのが、寿命100年に延びた今日このごろの老人である。 「自分で魚の骨はとれる」ご老人も多くなっている。 

 

そうだ。 子供の頃に教わった「艱難汝を珠にす」を思い出してみるが良い。「労り」は、相手を「柔わ」にする。 人生は、延びた。 まだまだ、育つ。特に、健常老人の場合は、そうである。 ここでも、有料老人ホームに混住する健常自立老人は、支払料金は同じであるのに、割りを食うのである。

 

時流から常に遅れるのが、行政、管理の側である。 いわゆる「後追い」管理である。 官僚や経営管理者たちは、「未然」と言う言葉を知らないのかもしれない。 常に「毅然」頑迷であろうと、神経を擦り減らしているからである。 

 

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いままでの鉄道大臣のブログから

いたわり(労り):以前に、私は、ブログの何処かで、高齢者を過度にいたわる(労る)ことは、彼等をダメにし、自主性を損なう、と述べたことがあります。 子供を甘えさせることが、甘えん坊を育てるようなものです。 人間、生きてゆく間に、幾つもの試練を経験します。

先を見る(生きる)

第一に高齢者は、人生の先を見るべきであると思う。  しかし、見るべき先が無ければ、先は見えない。 従って、第二に、先を作るべきである。  先を作ったら、見る立場を築くべきである。 すなわち、第三に、見る立場としての主体性を保持すべきである。

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世界大百科事典内のの言及

【性即理】より

北宋の程頤(ていい)(伊川)によって提唱され,南宋朱熹(しゆき)(子)によって発展させられたテーゼ。,伊川―朱子によれば,性(本性)は理であるのに対して情(感情,情欲としてあらわれる心の動き)は気である。 は本来善悪とは関係のない存在論的なカテゴリーであるが,朱子学では心を形づくる気は不善への可能性をはらむとみなすので, 情=気の発動いかんによっては本来的に天から賦与されている善性=理がゆがめられるおそれがある。…