鉄道大臣のひとりごと

老人ホームで過ごしながら徒然に考えたこと

老人ホーム内の小集団化

この施設には、90人近くのボケ老人、認知症患者、車椅子に乗った心体障害者、歩行器で歩いているボケ老人、認知症患者、完全健常人が混住している。 これだけの種類の人々が混住していると、自ずから分派が発生する。 もちろん、どの派にも属さない人もいる。 一言で言えば、この小さな施設の中に、複数の派閥という小文化圏成立の可能性がある。

 

派の形成は、趣味の類似、部屋の近さ、出身(出自)の類似、教育のレベル、共通の遊び、相互の人間的好き嫌い、その他身体的特徴(口臭がする、不潔さ=食事中や会話中の入れ歯の出し入れや洗浄、etc.)等、諸々の特徴に基いて行われる。 派は、食堂内の席の採り方、廊下での挨拶・会話の有無、などで歴然とするが、その歴然さは、相互の暗黙の了解に依って認められている(しかし、相互間の陰口は囁かれる)。

 

小集団は、また、相互のメンバーの間の嫉視(へんねし)、競争、抗争、いじめ、争い、を醸し出す。 極端な場合には、施設からの追い出し(追放)、までに発展する。 他方、目的(意識されている、いないの別なく)の如何で、諸派の連合も行われる。 老人の間には、「いじめ」という言葉はないが、実質「いじめ」と思われる現象が起こる。 しかし、そのために自殺することはない。 当人の「いじけ」だけが起こる。 仲間外れである。 寂しい老後の仲間外れであるから、哀れと言えなくもないが、当人が老婆だけに、それに相応する強気の「いけず(嫌がらせ)」であったりするから、相応と言えば相応でもある。

 

つい先日まで、仲良く付き合っていた二人が、突然、口も聞かなくなったりすることもある。 これは派閥の争いというよりも、むしろ喧嘩である。 もちろん、喧嘩の結果、概して仲良し同士の派閥が壊れることもある。 その結果、派閥メンバーの組み換えも起こる。 先日まで、仲良く隣り合わせで食事をしていたメンバーが、(施設側の承認なしに)他所の席へ移ったりする。

 

こうした状況は、話題の乏しい施設内では、同居するセンスの欠片(かけら)を少しでも残す暇な他の老人(主に老婆)たちの間で、すぐ知れ渡り、喧嘩や妬みの噂が流れはじめて、陰口、噂話、ゴシップに事欠かなくなる。