鉄道大臣のひとりごと

老人ホームで過ごしながら徒然に考えたこと

日本語

日本語は、便利な言葉である。 世界の全ての言葉を知っている訳ではないので、大言を憚るが、恐らく、世界でも数少ない便利語であると思う。 その便利語の最たる所以(ゆえん)は、漢字(漢文)、古語(大和言葉、平安、鎌倉、室町、安土桃山、江戸、明治・大正時代の言文=引き続く「言文一致運動」)、ひらがな、カタカナ、ローマ字、その他、各種外国文字を(カタカナを通して)写せるなど、ほとんどあらゆる言語が自在に使えること、さらに、話し言葉にしても、共通語(標準語)、方言、などが、実用的に通じるか否かは別として、とにかく使えること、漢語(字)の構成単位が小さく、一字で意味が表らわせ、しかもその組合わせが比較的自由であること、などにある。

 

換骨奪胎、漢字由来の日本語の文字は、元来象形文字である。一字一字に意味がある。 この漢字の組合わせで、あたかも「ロゴ(積み木)」のように、殆どの物、事を表すことができる。 カタカナ、ひらがなは、漢語を接着する補助に使える。この便利な日本語に匹敵する(私見では、少し劣る)のが、英語である。 英語は、世界語として定着しているが、その所以(ゆえん)は、国の力にある。 アメリカ、その祖語であるイギリスの言葉は、一時期、世界制覇を成し遂げた強国の言葉だからでからである。

 

日本語の便利さの成立は、英語のように力に依るものではない。 長い歴史を通しての民族の集合、文化の混合に依るものである。 幸い、日本は島国であり、南北に連なる異なる気象・天候(春・夏・秋・冬の四季や暖国と寒国の気候)に恵まれていた。 こうした自然の状況・環境が、そこに居住する人々の天与の資質と相まって、居住者、延いてはそのユニークな文化を育てることは、広く知られているところである。

 

日本列島の島々には、数多くの少種族が山地の多い各地に分断されて生活し、種々の方言を形成すると共に、一方で数百年に渡る戦国(撹拌)と平和(沈殿)の時代を、他方で、二千年近くも君臨する大和朝廷を頂点に戴き、安定と撹拌を分節的に続けて、形成されてきた。

 

この状態は、重ねて述べよう、世界でも稀な、偶然の幸いであった。  適度に異質で、適度に同質的な、民族(言葉)の融合が、頂点に大和朝廷を戴く、地域ごとの戦乱(撹拌)と節目ごとの平和(安定と沈殿)の続いた二千年余の文化的混合の年月を経て行われてきたのである。 不思議といえば、不思議。 幸運といえば、幸運。 これが日本語出生の秘密であった。

 

私は、日本人の一人として、この稀有(けう)の歴史を持つ日本国のこの現代に生まれ育った幸運を喜びたい。 これからは、この日本語を、一層活用すべき時代が来る。 英語やエスペラントに勝る便利語、日本語、を「力」でなく、「科学文化の恵み」を持って、世界語―グローバル言語―として、普及させたいものである。