鞍馬天狗

夢寐のたわごと

名人芸

三遊亭歌丸が亡くなった。 彼の落語は、名人芸だったと言われる。 この国には、「一子相伝(いっしそうでん)」の秘伝、名人芸が多い。 陶器制作方法、彫刻の仕方、画法の秘伝、落語の語り方、細かくは、飯の炊き方、料理出し汁のとり方、寿司の握り方、まで、「秘伝」の数には限りがない。 

 

こうした秘伝の多くは、特定家系や,特定流儀の歴代の弟子へと、他出を許さず、相続されるのであるが、特徴の一つは、そうした相伝が「個人」を介して行われることである。 歴史の繋がりを経て、個人が縦長に繋がり、子子孫孫の秘伝とされることである。

 

秘伝は他出を許さないから、拡がりが無い。 現代で言う「専売特許」である。 専売特許と名人芸の異なる点は、名人芸には「個性」の主張がある。 他出を許さないどころか、真似ようとしても他人には真似られない。 従って、名人芸の相伝は、他への拡がりから生まれ易い「相乗効果」は得にくい。 ちなみに、専売特許は、元々「拡がり」を防ぐ方法である。

 

日本のお家芸として、「和」がよく挙げられる。 和は集団の存在を前提とするが、名人芸には和は無い。 その意味で、名人芸は孤独である。 にもかかわらず、日本には、名人芸を誇る産業、仕草、産物も多い。 事実、名人に孤独な人が多い。

 

和の力は平凡人の協力の上に成り立ち易く、相乗効果を生み出す可能性が高い。

身体の比較的小さい日本人は、集団の協力に依る力に基づいて、大きな力を得ることが多い。 今年のワールド・サッカー・ロシヤ大会で日本サッカー集団の驚くべき力は、和の力から生まれたと思われる。 この集団の中に存在した名人は、居たとすれば、西野監督であった、と言えよう。 この事は、前任者と比べれば、明白なようである。