鞍馬天狗

夢寐のたわごと

嫌悪(けんお)

誰の心の中にも「虫」が住んでいる。 「虫が好かない」、「虫唾が走る」、「虫が良い)などと言うが、あの虫である。 なかんずく、「虫が好かない」の虫は、心の中に潜む扱いの面倒な虫である。 

この虫は「生理的」なものらしく、抱えている主人(宿主)の意のままにならない。 「走ってはいけない」と抑えつけても、勝手に走ってしまうのである。 「あんまり良くしては、いけないよ」と嗜め(たしなめ)ても、勝手に「善がる(よがる)」のである。

このような虫のことを漢語では、「嫌悪」と呼んだりする。 では、その漢語の意味を辞書に依って探ってみよう。

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けん‐お〔‐ヲ〕【嫌悪】の意味
[名](スル)憎みきらうこと。強い不快感を持つこと。「不正を嫌悪する」「嫌悪感」
出典:デジタル大辞泉小学館
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辞書の説明通り、嫌悪は、「生理的」な恣意的には抗し得ないもののようだ。 要するに「嫌い」は嫌いである。 他人の容喙(ようかい)し得ざるものである。 

翻って、近頃、世間で喧しく(かまびすしく)叫ばれる「差別」のことを考えてみよう。

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差別(さべつ)とは、特定の集団や属性に属する個人に対して特別な扱いをする行為である。 ... 国際連合は、「差別には複数の形態が存在するが、その全ては何らかの除外行為や拒否行為である。」 としている。
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「虫」は、事物に対しても、人間に対しても作用するが、「差別」は、人間同士の問題のようである。 着物や電気器具の区別はしても、差別はしない。 「虫の好かない相手」というのは居る。 だが「虫の好かない着物やIHヒーター」を語る人は、語ること自体は不可能ではないが、こちらの世界の人ではない。 
どうやら、人間に対する「虫の在り処」は、「差別」と紙一重の違いらしい。

虫が生理的に作用するものだとすれば、生理的に「気にいらない」相手も存在し得ることになる。 では、その生理的に気に入らない相手を差別できるか?
相手が女性なり、男性なりであるときには、まず問題は少ない。 異性を好まぬ人は、少ないからだ。 大抵の人は、異性に生理的に近かずこうとする。

その相手が外(異)国人だったら、どうなる?  肌の色が違えば、どうなる?
差別問題は、「論ずるは易く、行うは難い」問題である。 欧米諸国でも、未だこの問題を解決できずに居る。 同種の人間が集まっている日本国でも、この問題は、解くに難しい問題である。 まして「虫」問題は、いつの世までも蔓延る(はびこる)問題なのである。 解決には、「虫」の知らせを待つより仕様があるまい。