鞍馬天狗

夢寐のたわごと

秋(あき)

清少納言より

 

秋は夕暮、夕日のさして 、山の端(は)いと近うなりたるに、烏の寝どころへ行くとて、三つ四つ 二つ三つなど 飛び急ぐさへあはれなり。 まいて雁など連ねたるがの、いと小さく見ゆるは いとをかし。 日入り果てて 風の音 虫の音など、はたいふべきにあらず。

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秋の駅傍の辺り、夕日が沈む頃、寒い秋風に厚い上着の襟を立て、足早に帰宅を急ぐサラリーマンの群れ、彼らの瞼(まぶた)には、我が家の幸せで、温かい家族団欒の様子が、思い浮かべられています。 台所の炊事の音、並べられる食器のざわめき、燥ぎ(はしゃぎ)纏わり(まとわり)つく子供たちの声。

うつろな防衛大臣の答弁と国会の喧騒は、忍び寄る軍靴の響きと遠国の内戦の悲惨さ、難民の苦しみが思われます。 飛び来る弾丸、兵士の喚声、雷鳴の如き爆撃機や戦闘機の爆音、そこには家庭の団欒の欠片(かけら)もありません。 原子爆弾の閃光と轟音。 おぞましい死骸の山とビルの欠片。 焼け爛れた建物。 荒れ果てた都市。 黒い雨。 静かに横たわる山河。 

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春は曙。 やうやう白くなりゆく山際、少し明かりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。

夏は夜。 月のころは更なり、闇もなほ、蛍の多く飛びちがひたる。 また、ただ一つ二つなど、仄かにうち光て行くもをかし。 雨など降るもをかし。  
 
冬はつとめて。雪の降りたるは言ふべきにもあらず、霜のいと白きも、またさらでもいと寒きに、火など急ぎおこして、炭持て渡るも、いとつきづきし。 昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶の火も、白き灰がちになりてわろし。
清少納言