鉄道大臣

夢寐のたわごと

男はつらいよ:知床慕情

この映画は、もちろん、山田洋次監督の人気シリーズの一つ。 登上人物は、ご存じ寅次郎に加えて、今回は、主演、老(?)獣医師順吉を演じる三船敏郎、お相手は、近くのスナックを経営するママ悦子を演じる淡路恵子だ。 

この映画では、知床の港の人達の生活の一コマを切り取って見せてくれる。 経営に行き詰まった悦子は店を閉めて故郷の新潟へ帰ろうとする。 順吉は悦子に惚れているので、悦子が新潟へ帰るのに反対だが、無骨な順吉は、悦子に対する恋情を口に出せないでいる。 そこを見取った寅次郎が、順吉が渋る気持ちを踏ん切って「俺がお前に惚れているからだ」と言わざるを得ない状況へ順吉を追い込む。

山田洋次監督のその辺の話作りは、何時ものことながら絶妙だ。 順吉の気持ち、順吉告白の場の状況作りは、山田洋次監督自身の気持ちをよく表しているようにも窺える。 観客の一人として、人生90年を生きてきた男として、私には、この映画を制作した山田監督の気持ち、そして順吉の内面の恋情を推し量る寅次郎の気持ちには、大いに同感できるものがある。 

配役も良い。 無骨な順吉としては、三船敏郎は打って付けの役者。 変な二枚目でないのも良い。 空気、風景共に清浄で綺麗な漁村に住む無骨な侍獣医師として、三船を選んだ山田監督の着眼には敬服する。この映画の制作年は古い。 が、内容は古くない。 現代の毛羽立ち、荒れ擦れた心の世間の人々には、ぜひ見せたいし、見て貰いたい心温まる映画である。 

昔、有る政治家が、「だめなものはだめ」と喝破したが、「いいものは、いい」。 時代を超えて良い。 分野を超えて良い。 絵画、音楽、文学・小説、等々はもちろん、映画、漫画、浪花節、街の流し、民謡、民話、全て、良い物は良い。 と言って、「何でも良い」訳ではない。 良い物だけが良い。